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主人公と相棒(トミー・リー・ジョーンズ)、「昭和残侠伝」シリーズの高倉健と池部良のよう。


「ローリング・サンダー HDニューマスター [DVD]」ウィリアム・ディヴェイン/トミー・リー・ジョーンズ

1973年、ベトナム戦争からテキサス州サンアントニオへ帰還した空軍将校レーン少佐(ウィリアム・ディヴェイン)と部下のジョニー伍長(トミー・リー・ジョーンズ)は、地元で英雄として大歓迎される。しかしハノイでの7年間の捕虜生活での凄惨な拷問により、レーンの精神は傷ついていた。町の歓迎式典はレーンの功労を労い、「捕虜生活を1日1枚ずつ換算した高額な銀貨」と「州の誇りを象徴したベル」、「キャデラック」が贈呈されたが、周囲の歓迎と裏腹にレーンの表情は醒めていた。その様子をベルを手渡したリンダ(リンダ・ヘインズ)だけが気づく。レーン戻った家庭は変わっていた。妻ジャネット(リサ・リチャーズ)は夫の出兵中の寂しさから州警官クリフ(ローラソン・ドリスコル)と親しい
関係を築いてしまい、赤ん坊だった愛息のマークも成長しクリフへ懐いている。レーンにはどうする事もできず、家族やクリフにはレーンの心中を理解できない。クリフはジャネットとの関係も含めてレーンと新たな関係を築こうとするが、レーンは妻の事には無頓着な様で、唯一、息子を「チビ」と呼ぶなとクリフに告げる。数日後、レーン家に強盗が入る。強盗一味は歓迎式典での銀貨贈呈をTVで観たメキシコ人の徒党だった。彼らはレーンを脅し痛めつけるが、レーンは頑なに口を開かない。終にはディスポーザーでレーンの右手を破砕したところへ妻子が帰宅、マークは躊躇なく銀貨を渡すが、強盗たちは母子を射殺し、レーンをも撃って逃走。一命を取り留め病院で療養するレーンは、失った片腕に義手を取り付ける。息子を亡くした失意を静かな怒りへ変えた彼は、金属製の爪が装着された義手を巧みに操れるようリバビリを重ねる、銃弾を拾い装填できるようになると退院する。レーンに惹かれるリンダは病院に見舞いに行き、彼と接し始める。警察に強盗の詳細を話さずにいたレーンは、一味の会話から凡その居所を察し、リンダを連れてメキシコへと向かう。レーンの動向に気付いたクリフは警察の捜査網を使ってレーンに先回りしようとするが、強盗たちに返り討ちに遭う。強盗一味を探す道中で、リンダはレーンの孤独に共感し、共に生きたいと望む。しかしレーンはリンダをモーテルに残し、エルパソで暮らすかつての盟友ジョニー伍長の許へ向かう。そして、強盗一味の潜伏先を特定する。帰郷した町に居場所の無さを感じていたジョニーは、レーンと共に強盗一味を殲滅すべく、直ちに銃器を用意する。軍服に身を包んだ二人はキャデラックに乗り込み、強盗一味の根城である売春宿へ向かう―。
ジョン・フリン監督の1977年公開作。「新宿ハードコア傑作選」(2025年7月18日~9月4日/シネマート新宿)で同年8月15日からリバイバル上映されました。個人的には日本公開の翌年の'79(昭和54)年2月に池袋文芸坐にて最初に観ました。その時の併映が
マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」('76年/米)だったのは、共に脚本がポール・シュレイダーだからでしょう。因みに、「タクシードライバー」でロバート・デ・ニーロが演じた主人公のトラヴィスも、ベトナム戦争帰りの元海兵隊員と称していました。
「タクシードライバー」('76年/米)
「ザ・ヤクザ」('74年/米)
ポール・シュレイダーは「タクシードライバー」の前に、シドニー・ポラック監督、ロバート・ミッチャム・高倉健W主演の「ザ・ヤクザ」('74年/米)の脚本も書いていて、実質的には監督もしています。この時、ポール・シュレイダーと脚本を書いたのが兄のレナード・シュレイダーで、同志社大学と京都大学での英文学の講師として来日し、義侠の世界に興味を持ち、実在の暴力団にも出入りして、日本のアンダーグラウンドを研究したそうです(ポール・シュレイダーは、「MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS」('85年/米・日)では正式に監督を。この時に共同で脚本を書いた兄のレナード・シュレイダーは、生前の三島由紀夫とも親交があった。兄レナードは、長谷川和彦監督、沢田研二主演の「太陽を盗んだ男」('79年/東宝)の原作者でもある)。
ポール・シュレイダーが「ザ・ヤクザ」の脚本家であることを踏まえて改めてこの映画を観ると、ベトナム帰還兵物でありながらも、復讐のため相棒同士で死地へ赴く場面は、日本のヤクザ映画とそっくりで、「昭和残侠伝」シリーズ(1965(昭和40)年から1972(昭和47)年までシリーズ9作がある)の高倉健と池部良のようです。売春宿に到着した二人がショットガンを手に襲撃
し、阿鼻叫喚のなか、一味を射殺していく様や、頭数の多さに手こずり、二人とも被弾するもひるまずに応戦し、最後には一味を殲滅するのも、ヤクザ映画の殴り込みと同じパターン。二人共深手を負ったものの、お互いを支えながら戦場のようになった血まみれの売春宿を後にするのは、「ザ・ヤクザ」と同じパターンでしょうか(「昭和残侠伝」シリーズの場合、池部良は生還できないパターンが殆どだが)。
「昭和残侠伝 死んで貰います」('70年/東映)
昔観たときは、バイオレンスがやや空回りしている印象も受けましたが、今観ると、強盗に襲われたレーンが片手を台所のディスポーザー(昔観た時は何だかわからなかった)に入れられても頑なに口を開かないのは、拷問のPTSDで耐えることが"習い"になってしまっているためなのだなあと。捕虜生活での拷問体験がフラッシュバックしていることから窺え、その前の戦地で受けた拷問をクリフに話し、憑かれたように再現してみせる振る舞いも、その伏線になっていました。
それと、主人公のレーン少佐を演じたウィリアム・ディヴェインも良かったですが、レーンの盟友ジョニー伍長をトミー・リー・ジョーンズが演じていたのは、改めて映画館で観るまで気づきませんでした。80年代はテレビ出演が主で、映画は出演しても脇役だったようです。でも、こういう役、合っています。再鑑賞の収穫でした。
トミー・リー・ジョーンズ「ローリング・サンダー」('77年)
「ローリング・サンダー HDニューマスター版 [Blu-ray]」
「ローリング・サンダー」●原題:ROLLING THUNDER●制作年:1977 年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フリン●製作:ノーマン・T・ハーマン●脚本:ポール・シュレイダー/ヘイウッド・グールド●撮影: ジョーダン・クローネンウェス●音楽:バリー・デ・ヴォーゾン●原
案:ポール・シュレイダー●時間:95分●出演:ウィリアム・ディヴェイン/トミー・リー・ジョーンズ/リンダ・ヘインズ/ジェームズ・ベスト/リサ・リチャーズ/ローラソン・ドリスコル/ダブニー・コールマン/ジェームズ・ヴィクター/キャシー・イェーツ/ルーク・アスキュー●日本公開:1978/05●配給:松竹・富士映画●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-11)●2回目:新宿武蔵野館(25-08-19)(評価:★★★★)●併映(1回目):「タクシードライバー」(マーティン・スコセッシ) font>
トミー・リー・ジョーンズ in「ある愛の詩」('70年)/「JFK」('91年)/「逃亡者」('93年)/「依頼人」('94年)




刑務所を裏取引で出所したドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)は、引き換えに、取引相手のテキサスの政界実力者ベニヨン(ベン・ジョンソン)の要求で、妻キャロル(アリ・マッグロー)と銀行強
盗に手を染める。ベニヨンからはルディ(アル・レッティエリ)とジャクソン(ボー・ホプキンズ)が助手兼ドクの監視役として送り込まれ、綿密な計画の末に強盗は何とか成功するが、ジャクソンが銀行の守衛を射殺してしまう。ルディは目撃者に面が割れたジャクソンを車内で射殺し、今度はドクに銃を向けるが、ドクの銃が先に火を吹く。ドクは、銀行から奪った金を約束通りベニヨンの元に運び込ぶが、キャロルの様子がおかしく、実はベニヨンとキャロルは男女の関係にあり、当初はドク
を裏切って消す考えだったのだ。しかし、キャロルはドクではなくベニヨンを射殺する。ドクは逃走中に車を止め、嫉妬と怒りからキャロルを殴り倒す。一方のルディは、防弾チョッキ
のお蔭で死んでおらず、獣医の家に押し入り、ドクに撃たれた肩の治療をしていたが、ベニヨンの死を知り、ドクの追跡を開始する。ドクは町で自分が指名手配になっているのを知ってショットガンを
買い求め、警察に追われながらも逃げて、エルパソのホテルに辿り着く。だが、そこへはルディが先回りしていて、ベニヨンの手下も向かっていた。ルディがホテルに現れ、ドグが彼を殴り倒した時に今度はベニヨンの手下が現れて大銃撃戦が始まるが、ドクのショットガンで全員が倒され、ルディも射殺される。ドクはホテルからメキシコ人の老人のトラックに乗り込み、国境を越えたところで老人からトラックを買取り、夫婦はメキシコ側へ消えていく―。
しかしながら故・淀川長治は、必ずしも2人の未来は明るいと示唆されているわけではないと言っており、これは、原作にこの続きがあって、バッドエンディンが待ち受けていることを指していたのでしょうか。但し、原作における主人公のキャラクターは極悪人に近く、取引上やむなく銀行強盗をする映画の主人公とはかなり異なるようです。個人的には、この映画のラストには、やはり何となくほっとさせられます。
妻役のアリ・マックグローは銃を扱ったことがなく、マックイーンが銃の撃ち方を教えて銃に慣れさせたりもしたそうです
が、「ある愛の詩」('70年)の白血病で死んでいく女子大生よりは、こちらの方が"演技開眼"している印象です。でも、この作品での共演をきっかけにマックイーンと結婚し、この後2本だけ映画に出て実質的に映画界を引退してしまいました。6年後に離婚してしまったことを考えると惜しい気もしますが、2006年に68歳で Festen(映画「セレブレーション」の舞台化)でブロードウェイ・デビューを果たしています。
一方、「ある愛の詩」で共演したライアン・オニールは、その後「ペーパー・ムーン」('73年)、「バリー・リンドン」('73年)などに主演するなどして活躍しましたが、2001年に慢性白血病に冒されていることが判明し、また、パートナーであったファラ・フォーセットのガンによる死(2009年6月25日、マイケル・ジャクソンと同じ日に亡くなった)を看取るとともに、自身も前立腺がんであることが公表(2012年)されていて、こちらはかなりタイヘンそうだなあと(2023年12月8日逝去・82歳没)。
「ある愛の詩」は、エリック・シーガルによる同名の小説が原作ですが、未完の小説を原作として映画の製作が始まり、先に映画が完成し、映画の脚本を基に小説が執筆された部分もあるそうです。先に小説が刊行され、その数週間後に映画が公開されており、今で言う"メディアミックス"のはしりでした。ペーパーバックを読みましたが、初めて英語で読んだ小説の割には読み易かったのは、ある種ノベライゼーションに近かったせいもあるかもしれないし、ストーリーが古典的で結末が見えているせいもあったかもしれません。この映画のヒットの後、難病モノの映画が幾つか続いた記憶があります(アメリカ人は白血病モノが好きなのか?)。
この映画がアメリカでヒットしたことについて、映画監督の大林宣彦氏はアメリカで封切り時にこの作品を現地で観ていて、ベトナム戦争で疲弊したアメリカが、本音ではこのような純愛ドラマを求めている時代感覚を肌で感じていたとのこと。但し、この映画の作られた1970年と言えばまだベトナム戦争の最中ですが、映画内にその影は一切見えません(最初観た時は"ノンポリ"恋愛映画だと思ったが、今思えば意図的にそうしていたのか)。日本でもヒットしたのは、古典的なストーリーに加えて、
因みに、主人公のオリバー・バレット4世(ライアン・オニール)のルームメイト役で無名時代のトミー・リー・ジョーンズ(当時24歳)が出演していますが、その後3年間は映画の仕事がなく、彼の無名時代は長く続き、オリバー・ストーン監督の「
ライアン・オニール 2023年12月8日逝去。(82歳没)
(●ライアン・オニールが亡くなった。「ある愛の愛の詩」('70年)の興行的成功や「ザ・ドライバー」('78年)といった渋い作品もあるが、代表作はと言うとやはり「ペーパー・ムーン」('73年)と「バリー・リンドン」('73年)になるのではないか。「ペーパー・ムーン」は泣けた。原作はジョー・デヴィッド・ブラウンの小説『アディ・プレイ』だが、日本では『ペーパームーン』の題名でハヤカワ文庫 から刊行された。ライアン・オニールとテータム・オニールの父娘共演で話題になり、本国では年間トップの興行収入を得、1973年の第46回アカデミー賞ではテータム・オニールが史上最年少で助演女優賞を受賞したが、その後、彼女が思ったほど伸びなかったことを思うと、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の演出力がやはり大きかったか、または、父親ライアンの導き方が上手かったのか(個人的評価は、初見の時の感動に沿って★★★★☆)。
「バリー・リンドン」は、スタンリー・キューブリック監督が、18世紀のヨーロッパを舞台とし、ウィリアム・メイクピース・サッカレーによる小説"The Luck of Barry Lyndon"(1844年)を原作としたもので、アカデミー賞の撮影賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞を受賞した。世評は「ペーパー・ムーン」よりむしろ「バリー・リンドン」の方が上か。ただ、"ライアン・オニール"に目線を合わせると、主人公でを演じる彼が抑制を効かせた演技をすることで回りを浮き立たせているので、彼自身はやや背景に埋没している印象も受けなくもない。ラストの決闘シーンにおいてさえそう感じる。そこがキューブリック監督の演出のやり方なのだろうが(個人的評価は★★★★)。)
「ゲッタウェイ」●原題:THE GETAWAY●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:サム・ペキンパー●製作:デヴィッド・フォスター/ミッチェル・ブロウアー●脚本:ウォルター・ヒル●撮影:ルシアン・バラード●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジム・トンプスン●時間:122分●出演:スティーブ・マックィーン/アリ・マックグロー/ベン・ジョンソン/アル・レッティエリン/スリム・ピケンズ/リチャード・ブライト/ジャック・ダドスン/ボー・ホプキンス/ダブ・テイラー●日本公開:1973/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場パール坐(77-12-10)●2回目:自由が丘・武蔵野推理(84-09-23)(評価★★★★)●併映(1回目):「パピヨン」(フランクリン・J・シャフナー)●併映(2回目):「48時間」(ウォルター・ヒル)
「ある愛の詩」●原題:LOVE STORY●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ヒラー●製作:ハワード・ミンスキー●脚本:エリック・シーガル●撮影:リチャード・クラディナ●音楽:フランシス・レイ●原作:エリック・シーガル●時間:99分●出演:ライアン・オニール/アリ・マックグロー/ジョン・マーレー/レイ・ミランド/キャサリン・バルフォー/シドニー・ウォーカー/ロバート・モディカ/ラッセル・ナイプ/トミー・リー・ジョーンズ ●日本公開:1971/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-11-03)(評価★★★)●併映:「おもいでの夏」(ロバート・マリガン)/「フォロー・ミー」(キャロル・リード)
「ペーパー・ムーン」●原題:PAPER MOON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督・製作:ピーター・ボグダノヴィッチ●脚本:アルヴィン・サージェント●撮影:ラズロ・コヴァックス●原作:ジョー・デヴィッド・ブラウン●時間:103分●出演:ラ
イアン・オニール/テータム・オニール/マデリーン・カーン/ジョン・ヒラーマン/P・J・ジョンソン/ジェシー・リー・フルトン/ェームズ・N・ハレル/リラ・ウォーターズ/ノーブル・ウィリンガム/ジャック・ソーンダース/ジョディ・ウィルバー/リズ・ロス/エド・リード/ドロシー・プライス/ドロシー・フォースター/バートン・ギリアム/ランディ・クエイド●日本公開:1974/03●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:名画座ミラノ(77-12-18)●2回目:名画座ミラノ(77-12-18)(評価★★★★☆)
「バリー・リンドン」●原題:BARRY LYNDON●制作年:1975年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●撮影:ジョン・オルコット●音楽: レナード・ローゼンマン●原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー●時間:185分●出演:ライアン・オニール/マリサ・ベレンソン/ハーディ・クリューガー/ゲイ・ハミルトン/レオナルド・ロッシーター/アーサー・オサリヴァン/ゴッドフリー・クイグリー/パトリック・マギー/フランク・ミドルマス●日本公開:1976/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(79-02-05)(評価★★★★)




シカゴ記念病院の有能な血管外科医リチャード・キンブル(ハリソン・フォード)がある夜帰宅すると、妻のヘレン(セーラ・ウォード)が家の中で何者かに襲われて死に瀕していた。キンブルは犯人と思しき「片腕が義手の男」を撃退するも、妻は既に致命傷を負っており手遅れであった。キンブルは自分が取り逃がした義手の男について捜査するよう警察に懇願するが、警察は死の間際のヘレンの通報内容を誤解し、キンブル本人が妻殺しの濡れ衣を着せられ逮捕されてしまう。キンブルは裁判で無実を証明することができず、死刑判決を受けて刑務所へと移送されることになるが、その最中に他の囚人たちが逃亡を企てたことにより、護送車が列車と衝突し爆発炎上するという事故が発生する。事故を間一髪で生き延びた
キンブルは混乱に乗じ、妻を殺害した真犯人を自らの手で見つけて汚名をすすぐため、事故現場から逃亡してシカゴへと向かう。一方、いち早く脱走した囚人がいることを突き止めた連邦保安官補サミュエル・ジェラード(トミー・リー・ジョーンズ)とその部下達はキンブルを追跡する。時には持ち前のヒューマニズムが仇となって窮地に陥りつつも、執拗なジェラードの追跡を振り切りながら、キンブルはシカゴに帰り着いて証拠を辿り、同僚であり親友でもあるチャールズ・ニコルズ(ジェローン・クラッベ)からの援助も受けながら、自分が目撃した「片腕が義手の男」の名前を突き止める―。
オリジナルは1963年から1966年にかけて、デビッド・ジャンセン主演で放映され、アメリカ国内で平均視聴率45%という驚異的な数字を叩き出したTVドラマです。日本でも、1964(昭和39)年から1967(昭和42)年までTBS系列(関西地区は朝日放送)で放送されて人気を博し、最終話の放送時刻には銭湯が空になったと言われています(TVドラマ版は当初モノクロだったが、最後の方はカラーになった)。映画では、妻殺しの濡れ衣を着せられ死刑を宣告された医師リチャード・キンブルが、連邦保安官補サミュエル・ジェラードの追跡を逃れながら逃げまくるという枠組みは、TV版をそのまま
踏襲しています。
ハリソン・フォードは、
ハリソン・フォードより4つ年下のトミー・リー・ジョーンズ(当時46歳)は、この作品で'93年のアカデミー助演男優賞を受賞し、以降は「メン・イン・ブラック」('97年)(1998年・第24回「サターンSF映画賞」受賞作)、「逃亡者」のスピンオフ作「追跡者」('98年)などの
「メン・イン・ブラック」のバリー・ソネンフェルド監督はトミー・リー・ジョーンズのことを、「彼は大真面目に演じていてもどこかコミカルだ」と評していますが、確かにそうかも。「逃亡者」におけるトミー・リー・ジョーンズの中にも「メン・イン・ブラック」に通じるコミカル要素があるともとれますが、「メン・イン・ブラック」はそれが前面に出ていて、続編の「メン・イン・ブラック2」('02年)では、MIBに所属していたころの記憶を失い本名のケビン・ブラウンに戻って田舎町の郵便局長として働いているというさらにコミカルな設定。この設定とやや被るところのある、'06年から続くサントリーフーズの缶コーヒーBOSSのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」も、誰か慧眼の
持ち主が彼のそうした特性に着眼して起用したのでしょう(因みにトミー・リー・ジョーンズは親日家であり、大の歌舞伎ファンであるとともに
「逃亡者」に話を戻すと、トミー・リー・ジョーンズの"活躍"もあって、映画としては悪くはないのですが(初めて観た時の評価は星4つ)、改めて観直してみると、アクションのヤマ場が中盤のキンブルのダム底へのダイビングであり、あとはやや流れが緩慢な印象も受けます。電車内での「片腕が義手の男」との対決もある種お決まりのパターンであれば、最後に真犯人を追い詰めて銃撃戦になる展開もこれまたパターンであるように思えたため、星半個減の3つ半としました。元は連続ドラマであるところを一話完結にしているわけで、ストーリーをばたばたと収斂させざるを得ないのは致し方無いのかもしれませんが。
また「逃亡者」には、映画に出始めた頃のジュリアン・ムーア(左)が出演しています。前年にカーティス・ハンソン監督のサイコスリラー「ゆりかごを揺らす手」('92年)に出演して
いますが、その作品ではレベッカ・デモーネイが怖すぎて、彼女の印象は薄かったです。猥褻な診察を医師から受けたことで彼を告訴したアナベラ・シオラ演じる主人公が、医師が失墜し自殺したことから、レベッカ・デモーネイ演じるその妻から逆恨み的復讐を被るという話。ジュリアン・ムーアは、ナニー(ベビーシッター)として主人公の家に来ている女性(実は復讐を果たさんとする医師の妻)が危険人物であることを早くから見抜き「ゆりかごを揺らす手は世を支配する手」と主人公に忠告するその友人役。結局は犯人に残虐な殺され方をしてしまうという点から見ても脇役でした(ただし、レベッカ・デモーネイ演じる犯人も最後、自らの罠に嵌って同じ死に方をする)。
いるのを不審に思って警察に通報する女医役で出ていますが、キネ旬をはじめ多くの映画データべースで、「元同僚のアン・イーストマン医師(ジュリアン・ムーア)の協力で、病院の中にある義手を持つ人のリストを調べあげ...」などとあり、ジェーン・リンチ(右)が演じたキャシー・ワーランド医師の役との混同が見られます(キンブルに協力するのはキャシー・ワーランド医師。ジュリアン・ムーア演じるイーストマン医師ではない)。これも、ジュリアン・ムーアが後に有名になったためでしょうか。最近では、2014年に「カンヌ国際映画祭女優賞」を「マップ・トゥ・ザ・スターズ」('14年/米・カナダ・独・仏)で受賞し
たため、ジュリエット・ビノシュに続いて世界三大国際映画祭すべての女優賞を制覇した2人目の女優となり、さらに同じく2014年公開
の「アリスのままで」('14年/米)でゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)とアカデミー賞の主演女優賞を受賞しています。(その後も「ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞」を受賞したペドロ・アルモドバル監督の「
因みに、「片腕の男」の義手の資料を集めるためにキンブルが潜り込んだ病院は、本作の1年後に放送が開始されたTVドラマ「
先に挙げた「ゆりかごを揺らす手」は、サイコスリラーとしてはよく出来ていたように思います。復讐を謀るため復讐相手の家にベビー・シッターとして入り込んだレベッカ・デモーネイが、復讐相手のの赤ん坊には異常な愛情を注ぎ、母性愛に目覚めていくというのが不気味で、このあたりはレベッカ・デモーネイの表情と演技に負うところが大でしょう。深夜、密かに赤ん坊に自分の乳をふくませて馴染ませ、母親の乳を嫌がるように仕向けるシーンは怖かったです(しかし、流産した女性でもお乳はでるのか?)。展開が敢えてそこを狙ったのかと思ってしまうほ定石どおりで、それまで積み重ねてきた怖さを一気に爆発させるとうなスリリングでユニークなクライマックスがあるわけでもないため、コアなミステリファンやスリラーファンには物足りないかもしれませんが、自分にはちょうどいい程度でした(笑)。
「逃亡者」●原題:THE FUGITIVE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・デイヴィス●製作:アーノルド・コペルソン●脚本:デヴィッド・トゥーヒー/ジェブ・スチュアート●撮影:マイ
ケル・チャップマン●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●原作:ロイ・ハギンズ●130分●出演:ハリソン・フォード/トミー・リー・ジョーンズ/ジェローン・クラッベ/セーラ・ウォード/ジュリアン・ムーア/アンドレアス・カツーラス/ジョー・パントリアーノ/ダニエル・ローバック/L・スコット・カードウェル/トム・ウッド/ジェーン・リンチ●日本公開:1993/09●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)



「メン・イン・ブラック」●原題:MEN IN BLACK●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:バリー・ソネンフェルド●製作:ウォルター・F・パークス/ローリー・マクドナルド●脚本:エド・ソロモン●撮影:ドン・ピーターマン●音楽:ダニー・エルフマン(主題歌:「Men in Black」ウィル・スミス●原作:ローウェル・J・カニンガム●98分●出演:トミー・リー・ジョーンズ/ウィル・スミス/リンダ・フィオレンティーノ/ヴィンセント・ドノフリオ/リップ・トーン/トニー・シャルーブ/シオバン・ファロン/ジョン・グリース/カレル・ストルイケン/フレドリック・レーン●日本公開:1997/12●配給:ソニー・ピクチャーズ リリーシング(評価:★★★☆)
「メン・イン・ブラック2」●原題:MEN IN BLACK2●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:バリー・ソネンフェルド●製作:ウォルター・F・パークス/ローリー・マクドナルド●脚本:ロバート・ゴードン/バリー・ファナロ●撮影:グレッグ・ガーディナー●音楽:ダニー・エルフマン(主題歌:「Black Suits Comin' (Nod Ya Head)」ウィル・スミス●原作:ローウェル・J・カニンガム●88分●出演:トミー・リー・ジョーンズ/ウィル・スミス/ララ・フリン・ボイル/リップ・トーン/ジョニー・ノックスビル/ロザリオ・ドーソン/トニー・シャルーブ/パトリック・ウォーバートン/ジャック・ケーラー/デヴィッド・クロス●日本公開:2002/07●配給:ソニー・ピクチャーズ リリーシング(評価:★★★☆)
「ゆりかごを揺らす手」●原題:THE HUND THAT ROCKS THE CRADLE●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:カーティス・ハンソン●製作:デヴィッド・マッデン●脚本:アマンダ・シルヴァー●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:グレーム・レヴェル●110分●出演:アナベラ・シオラ/レベッカ・デモーネイ/マット・マッコイ/アーニー・ハドソン/ジュリアン・ムーア/マデリーン・ジーマ/ジョン・デ・ランシー●日本公開:1993/09●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)
●2020年テレビドラマ化「テレビ朝日開局60周年記念 2夜連続ドラマスペシャル・逃亡者」(テレビ朝日・2020年12月5日5・6日放送)




この作品は「ザ・ファーム/法律事務所」('93年/米)としてシドニー・ポラック監督、トム・クルーズ主演で映画化され、グリシャム作品は『ペリカン文書』(The Pelican Brief '92年発表)、『依頼人』(The Client '93年発表)、そして処女作の『評決のとき』(A Time to Kill '89年発表)も映画になりました。
アラン・J・パクラ監督の「ペリカン文書」('93年/米)は、ジュリア・ロバーツ演じる法学部の学生とデンゼル・ワシントン演じるワシントン・ヘラルド紙の敏腕記者という取り合わせでありながら、今一つ、印象が弱かったような感じもしました(この作品はデンゼル・ワシントンの出世作の1つとなるが、以来、デンゼル・ワシントンが出てくると、もう予定調和が見えてしまうような...)。
ジョエル・シュマッカー監督の「依頼人」('94年/米)の方は、スーザン・サランドンが夫の裏切りにより家族を失うという傷を抱えた中年女性弁護士役で、自分が1ドルで依頼人を引き受けた子供を守るため、トミー・リー・ジョーンズ演じる野心家の検事ロイ・フォルトリッグと対決するもので、女性弁護士のアルコール中毒からの再起という点では、バリー・リード原作でポール・ニューマンが同じくアル中からの復活を遂げる弁護士を演じた「
これも、2時間に収めるために原作を相当改変していますが、芸達者スーザン・サランドンの演技が効いていて、「

「ザ・ファーム/法律事務所」●原題:THE FIRM●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●製作:シドニー・ポラック/ジョン・デイヴィス/スコット・ルーディン●脚本:デヴィッド・レイフィール/ロバート・タウン●撮影:ジョン・シール●音楽:デーブ・グルーシン●原作: ジョン・グリシャム 「法律事務所」●時間:155分●出演:トム・クルーズ/ジーン・ハックマン/エド・ハリス/ジーン・トリプルホーン/ジョン・ビール/ウィルフォード・ブリム




「ペリカン文書」●原題:THE PELICAN BRIEF●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督・脚本:アラン・J・パクラ●製作:ピーター・ヤン・ブルッジ/アラン・J・パクラ●撮影:スティーヴン・ゴールドブラット●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:ジョン・グリシャム●時間:141分●出演:ジュリア・ロバーツ/デンゼル・ワシントン/サム・シェパード/ジョン・ハード/トニー・ゴールドウィン/ジョン・リスゴー/ヒューム・クローニン●日本公開:1994/04●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価★★☆)



マフィアの大ボスだったサム・ジアンカーナが、自分はマリリン・モンローの死とケネディ兄弟の暗殺に深く関わったと語っていたのを、実の弟チャック・ジアンカーナが事件から30年近い時を経て本にしたもので、読んでビックリの内容で、本国でもかなり話題になりました。

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「JFK」●原題:JFK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:オリバー・ストーン●製作:A・キットマン・ホー/オリバー・ストーン●脚本:オリバー・ストーン/ザカリー・スクラー●撮影:ロバート・リチャードソン●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:ジム・ギャリソンほか●時間:57分●出演:ケビン・コスナー/トミー・リー・ジョーンズ/ジョ
ー・ペシ/ケヴィン・ベーコン/ローリー・メトカーフ/シシー・スペイセク/マイケル・ルーカー/ゲイリー・オールトコン/ドナルド・サザーランド/ジャック・レモン/ウォルター・マッソー/ジョン・キャンディ/ヴィンセント・ドノフリオ/デイル・ダイ/ジム・ギャリソン/(冒頭ナレーション)マーティン・シーン●日本公開:1992/03●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)



落合 信彦(おちあい・のぶひこ)国際ジャーナリスト・作家。2026年2月1日、老衰のため東京都内の病院で死去。84歳。国際情勢や諜報関係の事情をレポートした作品や、それらを題材とした小説、翻訳、若者向けの人生指南書を多数執筆した。代表作『二〇三九年の真実』(1977年)、『戒厳令1988年ソウル 長編小説』(1986年)、『ケネディからの伝言』(1993年)。アサヒビールから発売された辛口生ビール「スーパードライ」のテレビCMの初代キャラクターに起用された。